2010年02月25日

完全なる証明

10022501.jpg

 先日、NHKオンデマンドで「100年の難問はなぜ解けたのか 〜天才数学者 失踪の謎〜」を視聴しました。ポアンカレ予想という史上最大級の難問を解決したロシア人、グリゴリー・ペレルマンのドキュメンタリーです。そのあまりに衝撃的な証明内容に「えー!!」と声を上げて驚きました。そして何より、そのような偉業に対する一切の受賞を拒否し、人との関わりをも絶ってしまったペレルマン本人に強い興味を持ちました。
 そこで、いくつかあるポアンカレ予想関連の本の中で、ペレルマン本人やその育成環境に焦点をあてたこの本を購入しました。

 本書で注目すべきはソビエト時代の教育環境です。平均的な労働者を輩出することを最大の目的とした指導方法は学習意欲を阻害し、選ばれた優秀な人間であっても人種差別によって希望の進学が叶わなかったりと、ひどいところが目立つものでした。
 そんな中で、ペレルマンは非常に恵まれた環境で数学を学びました。「自分の取り組みにはそれに応じた報いがある」と信じ、高いモチベーションを維持することができたのです。このことは場所や時代を問わずに重要なことですが、ソビエトの状況ではそのことが際立っています。

 しかし、純粋すぎたペレルマンはだんだん自分の理想と現実との乖離に苦しむようになったようです。論理や規則に厳格なペレルマンですが「じつはとても感情的な人間なのかもしれない。あの頭脳をフル回転させて、自分の感情になんとか説明をつけようとしているのではないか。」という意見が述べられています。彼はポアンカレ予想という世紀の難問とだけでなく、感情という、おそらく未来永劫、論理的に割り切ることのできない問題とも、一人孤独に闘ったのではないかと思います。

 外界との関わりを閉ざす道を選んだペレルマンですが、今も何かに興味を持って取り組んでいるようです。これからも自分の信念に忠実に、有意義な日々を送ってほしいです。
posted by こうじ at 00:00 | 数学・物理